三木ちづルートまとめ


さも当然ルートがあるかのように語り出す真改三木ちづルートのまとめ、あらすじ
当然ながら非公式の捏造ルートです。バッド、悲恋もあるけどまだ未掲載。
合間にスチルイベントが入るけどそれも(あらすじには不要のため)省略しています。

※三木ちづ創作は特記なければすべてB(御陵衛士ルート)で執筆しているため、
 アルファベット順に関係なく、Bが正史、Aはifの一つです。
 AとBの描写は共通している部分もあり、
 共通部分の記載をBで省いている箇所もあるためAを掲載しています。
 
ジャンプ
A(人質ルート) 怨恨や諦念に焦点を当てており、甘さ控えめ
B(衛士ルート) 家族、仲間との絆に焦点を当てており、かなり甘め


Aパターン(人質ルート)



 千鶴は近藤派の幹部と親しいため、伊東派とは隔たりがあり、関わらないよう気を付けていた。ただ同じ屯所に暮らしている以上、二条城の伝令程度には関わりがあり、良好な関係とは言い難いが目の敵にしている訳でもないため、三木や伊東とも挨拶程度は交わしており、良い人ではないが根っから悪い人でもないとの印象を抱く。
 お互い良い印象を抱いている訳ではないが、可もなく不可もない関係を築いていた。やがて千鶴が羅刹に斬られ、三木は伊東らと共に離隊。御陵衛士となる。

 やがて御陵衛士が近藤の暗殺計画を立てていると発覚し、油小路の変が起きる。
 事件前、伊東を暗殺するという近藤、土方らの決定に千鶴は動揺する。三木や伊東らとの交流を思い出し、暗殺という手段を取ることに悩むが、「近藤を守るためには仕方がない」、「発言権も影響力もない自分が意見を出したところで決定が覆ることはない」と閉口。せめて平助だけでも助けようと油小路へ向かい彼の説得を試みる。
 油小路にて薩長が乱入してきたことで騒然とする中、逃げ惑い、倒れる御陵衛士たちの中に三木の姿がないことに気付く。ひとまず平助を助けようとするが、平助は乱戦の中で重傷を負い、のちに羅刹化する。

 明け方、亡くなった伊東のことを考え寝付けず起き出した千鶴は、一人玄関を警備していた相馬に会う。千鶴の顔色が悪いと気付いた相馬は千鶴を座らせ、すぐに戻るからと水を取りに屯所内へ戻っていく。
 ちょうどそのとき、三木が新選組幹部への恨みを募らせ屯所へやってくる。伊東の死を気に病んでいた千鶴は思わず三木だけでも無事でよかったと口にするが、三木がこれに激昂。兄を、仲間を殺され、数少ない仲間と生き残った三木は、怒りと恨みから新選組幹部へ呪詛のごとき悪意をぶちまける。
 先に暗殺を計画していようと、実際に殺されたのは伊東であり御陵衛士の仲間である。大切な者たちを喪い、荒ぶる感情をそのままぶつけてくる三木の言葉に、千鶴は彼の言い分はもっともだと愕然とする。
 屯所へ乗り込み近藤や土方、そして幹部らを殺すと息巻く三木だが、千鶴は一人で乗り込むなど無茶だ、殺されてしまうと慌てて取りすがって止める。千鶴を振り払って進もうともみ合っている内に、飲み水を取りに行っていた相馬が戻り、増援を呼ばれたことで三木は襲撃を断念、逃走する。突き飛ばされ、へたり込みながら千鶴は三木の言葉を思い出す。
 油小路事件発生前、確かに千鶴は迷っていた。自分の言葉は届かないだろうと諦めてしまったことを悔い、涙があふれる。
 確かに言ったところで何も変わらなかったかもしれない。そうだとしても結局何も動かなかったのだから、他の隊士同様、暗殺に同意したも同然である。
 そう考えた千鶴は、伊東が死ぬと分かっていたのに何もしなかった自分が三木の無事を喜んだ軽率さ、人の命を「仕方がない」「どうせ意味がない」と諦めた自分への嫌悪や自責の念に苛まれる。

 やがて伏見奉行所へ移った新選組だったが、近藤が何者かに狙撃され負傷。犯人は御陵衛士であると調べがつき、彼らの恨みの深さを思い知った千鶴は悩みを深めていく。

 年が明けて鳥羽伏見の戦いが始まり、奉行所が陥落。隊士の手当てに当たっていた千鶴も本隊と共に脱出するが、逃走中の攻防により一人はぐれてしまう。山中を彷徨いながら大坂城を目指すが、新政府軍の一隊を率いていた三木に見つかり捕らえられる。
 新選組へ復讐したい三木は千鶴なら新選組の居場所を知っているはずだと考え、何としても口を割らせてやると刀に手を掛けるが、そこへ新政府軍の羅刹が現れる。友軍かと思い手を止める三木だが、羅刹は仲間のはずの三木の部下たちを殺害する。
 羅刹の言動を見た千鶴は彼らが変若水の毒で正気を失っているのだと気付くが、離隊騒動の際に羅刹の存在は知ったものの詳細を知らず、初めて目にする三木は実態を知らず苦戦する。新選組の幹部たちの対処を思い出した千鶴が「心臓を貫くか首を落とす」よう伝え、三木は羅刹の心臓を狙い、何とか倒すことに成功する。窮地を脱し、凄惨な現場に千鶴と二人で取り残された三木は、あれはなんだ、お前らが隠していたのはこんな化け物だったのかと千鶴をなじる。
 新選組や羅刹に関わったことで、三木はまたしても仲間を殺されてしまった。羅刹を生み出したのは自分の父・綱道であると考える千鶴は再び責任を感じて何も言い返せず、胸倉を掴まれ、突き飛ばされても抵抗することも出来ない。

 新選組への怒りを再び燃え上がらせた三木は苛立ちのまま千鶴を手にかけようとするが、そこへ不知火が現れギリギリのところで千鶴を庇う。
「同族のよしみだ。加勢はいるか、女鬼」
 千鶴を背に庇う不知火へ、千鶴は三木を傷つけないで欲しいと頼む。三木も不知火も驚くが、不知火は笑って承諾する。元より不知火は三木など眼中になかった。不知火が現れたのは、千鶴を風間のところへ連れていくためだという。戦場でみすみす貴重な女鬼を死なせるくらいなら、確保して風間へ引き渡せば恩を売ることが出来る。拒絶し、距離を取ろうとする千鶴と、聞く耳を持たず拉致しようと近づく不知火。
 そこへ三木が割って入る。三木は新選組の居場所へ案内させるため、また彼らを確実に殺す弱みとするため千鶴を人質にしようとしていた。
 不知火は三木を殺そうと発砲するが、千鶴が咄嗟に突き飛ばし三木を庇う。銃弾は千鶴の腕を掠めていたが、鬼の回復力により見る間に血が止まっていく。それを見た三木は羅刹の回復力を思い出し、千鶴も羅刹なのかと畏怖の眼差しを向けるが、不知火は「まがいものと鬼の違いも分からないのか」と嘲る。
 困惑する三木をよそに不知火は今度こそ千鶴を連れ去ろうとするが、そこへ不知火を探して天霧が現れる。鬼はこの戦いから既に手を引こうとしていること、そのために急ぎ不知火にも戻るよう告げる天霧。
 千鶴を連れて戻ろうと言う不知火だが、千鶴は無理に連れていくのであればいつでも、風間の里へ着いてからでも、必ず死んでみせると拒絶する。この場で舌を噛み切りかねないと判断した天霧に止められ、不知火は千鶴の奪取を諦め去っていく。

 取り残された千鶴と三木の間に重苦しい空気が満ちるが、三木は戸惑いながらも、改めて千鶴を人質に新選組を追うと決意し、千鶴を取り押さえる。千鶴は三木に同行し新選組の元へ向かうと承諾、二人は大坂へと向かう。
 この場で三木から逃れるのは難しく、どのみち三木はどこまでも新選組を追ってくる。それなら一緒に行ったほうが動向が分かるだけいくらかマシだ。
 そして何より、千鶴は三木を死なせたくないと思い始めていた。三木の人生が歪められた遠因は羅刹にあり、彼もまた被害者である。三木に同行し、どうにか彼を死なせない方法を千鶴は模索し始める。その想いの原動力は、伊東の事件を経て千鶴の中に深く根付いた、「もう二度と、行動しないことで後悔するのは嫌だ」という感情だった。

 新選組を追って大坂へ向かうが、旧幕府軍は既に江戸へ撤退していた。
 三木は新政府軍の元へ戻り、千鶴を連れて関東へ渡る。何とか新選組を追う部隊へ配属され、甲陽鎮撫隊として甲府へ進軍した新選組を追うが、新選組と交戦する前に日中も行動できる新型羅刹に遭遇。率いていたのは、千鶴を長として迎えた上で羅刹の国を作り人間へ復讐しようとする綱道だった。
 三木は部隊の兵に本隊へ合流するよう指示して逃がし、綱道、羅刹に相対する。千鶴の身柄を求める綱道と、羅刹を拒絶する三木と千鶴は対立するが、生身の人間である三木一人では大勢の羅刹相手にはなすすべがない。千鶴は三木を庇って深手を負い、また綱道へ「引いてくれなければ自刃する」と脅し一時撤退させる。
 自分の命を何だと思っているのか、恩を着せたつもりかと言いながらも、千鶴の言動に困惑する三木。そんなつもりはない、ただ、もう後悔したくないから思うままにためらわず行動しているだけだと告げ、千鶴は痛みから気絶してしまう。
 戸惑いと苛立ちを募らせる三木だが、ひとまず千鶴を治療するため江戸での逗留を余儀なくされる。

 千鶴の治療と療養のため、また戦地選択に於いて自由の利かない新政府軍を抜けた三木は、雪村診療所で千鶴の回復を待ちながら新選組の動向を追う。
 甲州勝沼で大敗を喫した新選組は、江戸(綾瀬)の屯所に逗留していた。雪村診療所から綾瀬までは徒歩で二時間ほどと近場であり、いつでも襲撃出来る位置にあった。千鶴の傷が塞がり、歩けるようになるまで回復するのを待って機会を伺う三木だが、突如新選組らの歩兵が新政府軍に掴まり、彼らは流山へと部隊を移動させてしまう。急いで追い掛ける三木と千鶴だが、新選組は流山で近藤が捕縛、本隊とはすれ違ってしまい追いつくことが出来ない。

 捕縛された近藤を追い江戸へ引き返した三木は、情報収集をする内、既に新選組幹部の多くが死亡、離隊などで失われていることを知る。大坂で井上、山崎が死亡。江戸で沖田は病に倒れ離脱、永倉と原田は離隊していた。羅刹となった山南、平助は生死不明であり、近藤は捕縛され処刑される見込みである。三木は復讐相手が時代の流れ、他者の手により失われていく虚しさに襲われる。
 近藤が処刑される当日、三木は千鶴を連れて板橋へ向かう。晒された首を見て泣き崩れる千鶴と物言わぬ近藤の首を見つめる三木の胸中には、自ら手を下せなかったことで怒りや悲しみのやり場がなくなってしまった遣る瀬無さと、なすすべなく殺された近藤を想って泣く千鶴がとうとう自分と似た立場になったのかという、憐みにも似た無常観が満ちていた。

 近藤の死を見届けた三木は、残る幹部の土方、斎藤を追って再び新選組の追跡を始める。
 三木と千鶴の立場や関係は変わらないものの、必要以上につらく当たることはなくなっていた。
 既に宇都宮城での戦闘を終えて北上していた新選組を追って二人も東北へと入るが、仙台を目前にしたところで綱道の暗躍を知り、これを阻止することになる。

 仙台城を支配下に置いているのは綱道と、彼と結託した山南だった。大勢の羅刹を前に千鶴を庇いながら戦う三木だったが、千鶴を連れていると宣言することで羅刹の攻勢は弱まるものの、次第に押され始める。
 撤退も出来ず、いよいよ千鶴が自らの身と引き換えに三木を逃がそうとしたそのとき、山南が綱道を裏切り形勢が逆転。山南が羅刹を止めている間に千鶴は綱道の説得を試みる。

 羅刹になった者の苦しみ、羅刹に襲われ殺された者の苦しみを目の当たりにしてきた千鶴は、羅刹をこれ以上増やしてはならないと訴えるが、綱道は雪村一族が人間に滅ぼされた折の恨みを引きずっており、本家の娘千鶴の血脈と羅刹の力により雪村家を再興、人間へ復讐しなければ遣り切れないと言う。
 綱道は傍系の鬼であり雪村本家を守る立場にあったが、抵抗も出来ず滅ぼされた後悔から、人間への復讐と雪村家の再興を亡くした一族へ誓っていた。
 思いがけず生まれの話を聞かされ衝撃を受ける千鶴だが、それでも人間への復讐をやめるよう説得する。
 既に羅刹により多くの人間が死に、苦しみ続けている。復讐したところで亡くした人間は還らず、雪村の里が蘇ることもない。復讐を成したところで、今度は復讐された復讐として報復が始まるだけだと。
 今からでも羅刹たちを救う研究をして、贖罪をしながら静かに暮らそうと訴えるが、綱道は羅刹となった者は力を使い果たせば死ぬしかないと非情な現実を伝える。

 二人の問答は平行線を辿り、話し合いは決裂してしまう。覚悟を決め、小太刀を抜こうとする千鶴に代わり、三木が綱道と対決する。最期の瞬間、綱道は正気を失った羅刹から千鶴を守ろうとし、その隙に三木が綱道を殺害する。
「(最後には対立してしまったが)綱道は自分を家族だと思ってくれていただろうか」と泣き崩れる千鶴に、三木は「死んでも家族の絆は失われない」と答える。
 綱道の亡骸に縋り、ごめんなさいと繰り返しながら泣く千鶴を背に、三木は山南と共に羅刹たちを仕留めていく。千鶴と綱道の復讐にまつわるやり取りが、三木の中にも深く響いていた。

 仙台で新選組のため、自らの研究の後始末のため、羅刹の処分を終えた山南は力尽きる。
 三木と共にいる千鶴へ屯所での長い軟禁生活や大坂へ置いて行ってしまったことを謝罪するが、千鶴は「新選組の皆さんと一緒に過ごせてよかった」と素直な気持ちを伝え、彼の手を取り最期を看取る。

 そうして静かになった仙台城に、山南らの騒動を聞きつけた土方率いる新選組が到着した。
 三木と千鶴の姿に驚く土方の前で、三木は千鶴へこの旅の終わりを告げる。
 新選組のしたことは決して許すことは出来ないが、時流に翻弄され今や見る影もなく変わってしまった新選組の苦境、そして先の千鶴と綱道のやり取りに、復讐の虚しさをまざまざと見せつけられてしまった。
 憎しみは消えることはなく、土方が死んだところで恨む気持ちも失せはしない。手を下しても、他人に処刑されても家族や仲間を喪った空虚は埋まることはない。
 それならせめて少しでも長く生きて長く苦しめと、落ち着いた面持ちで三木は告げる。
 土方らの戦況は芳しくなく、羅刹隊も既にない。旧幕府軍が追い込まれていることは明らかだった。このまま戦えば、名が知れている土方は戦場で生き残ったところで間違いなく死罪は免れない。
 三木はこの先の死を求めることで自分の中に渦巻く復讐心を眠らせることにしたのだ。

 三木はここまで人質のつもりで連れ回してきた千鶴へ詫び、捨て鉢になって無駄死にすることなくここへ至れたのは千鶴のおかげだと礼を告げる。
 土方はこの先の戦いが三木の示唆した通り苛烈であることを理由に、千鶴を副長付小姓の任から解く。そして三木へ、先ほどの詫びの気持ちが本当なら江戸まで無事に連れ帰ってやって欲しいと頼み、更なる戦いへと振り返らず去っていくのだった。

 江戸へ引き返し雪村診療所へ到着した二人の元に、旧幕府軍が蝦夷で戦闘を続けているという報が届く。
 伊東や御陵衛士、綱道の菩提を弔いながら、前を向いて生きていく。それが自分なりの復讐であり、新選組への弔いだと言う三木。これからお前はどうするのかと千鶴へ尋ねるが、千鶴は返答に詰まってしまう。
 三木を死なせたくないという願いも、羅刹を止めなければという使命も果した千鶴は、唯一の肉親を失い、頼る者も目標もなくなってしまったことにようやく気付く。
 それならば、と三木が言う。
 似た者同士だ。俺は綱道に手を掛けた。また新選組へ復讐したくなるかもしれない。
 もごもごとはっきりしない言葉を重ねる三木に戸惑う千鶴へ、三木は観念したように告げる。
 もう少し共に過ごせば、お前にも俺が必要になるんじゃないのか。
 言葉の真意に気付いて驚き慌てふためく千鶴は、三木から与えられた「これから」の未来に希望を感じるのだった。




Bパターン(御陵衛士ルート)



※屯所時代、衛士時代、油小路、鳥羽伏見までの経緯補足は最下部に別記
 (上記部分は実際に創作する前提でこのまとめを出したため、仔細は各話参照)

 屯所時代、伊東と共に入隊してきた三木とひょんなことから関わりを持ち、少しずつ親しくなっていく千鶴。羅刹などの仔細は伏せながらも父・綱道を探すため新選組にいるのだと打ち明けると、三木は今現在新選組には政変への対応などで綱道を探す余力はなく、また千鶴も外出を禁じられている軟禁状態では誰も探していないに等しいこと、千鶴が正体を隠して屯所に身を置いている以上綱道から千鶴へ連絡を取ることも出来ず、このままでは本当に生き別れになると警告する。
 真剣に綱道を探したいのなら新選組を離れたほうが良いと諭され、悩みながらも、様々なきっかけ、原因を理由に、千鶴は御陵衛士の離隊の際に三木と共に新選組を離れる。
 御陵衛士に加入した訳ではなく三木個人の預かりとして、千鶴は綱道を探しながら、実に三年ぶりに自由に外出出来るようになる。千鶴の身の安全のため三木が付き添うことも多く、急速に距離を縮めた二人は束の間の平穏を楽しむ。そうしている間にも、京の町には戦渦が迫りつつあった。

 やがて油小路の変が起き、伊東と御陵衛士の仲間が大勢死亡。三木は悲嘆し、新選組への復讐を誓う。兄と仲間を同時に喪い、またそのとき現場にいられなかったことで自分を責めて悔いている三木は死に場所を探しているようにも見え、千鶴は三木を死なせたくない一心で同行し、復讐を止めようとする。

 鳥羽伏見の戦いを抜け新選組を追う道中で千鶴を連れ去ろうとする不知火と遭遇、交戦し、千鶴が鬼であることや綱道と羅刹の関係が三木に露呈。千鶴が新選組に身を置いていた経緯を正しく理解した三木は、ますます新選組への憎しみを募らせてしまう。
 羅刹に関わったことで新選組に囚われた千鶴、兄や仲間を喪った自分…と、原因あるいはきっかけが羅刹にあると考えた三木は、無闇に羅刹を増やし戦火を広げる綱道を止めたい千鶴の願いに同調し、新選組を追いつつ綱道の行方も探っていく。

 やがて、千鶴を長として迎えた上で羅刹の国を作り人間へ復讐しようとする綱道、薫と遭遇する。千鶴の身柄を求める綱道らと、羅刹を拒絶する三木と千鶴は対立するが、生身の人間である三木では羅刹にも薫にもなすすべがない。
 千鶴が三木を庇い深手を負ったこと、その状態で「退かなければ自刃する」と脅したこと、また不知火がやってきたことで綱道と薫は一時撤退する。
 油小路で糸を引いた一味であり、また鬼の自覚がない千鶴に辛辣な言葉を投げかける不知火に三木は反発するが、ひとまず千鶴を治療するため江戸での逗留を余儀なくされる。

 千鶴の傷は大怪我であったものの、鬼の回復力と松本の治療、三木の看病の甲斐もありどうにか傷は塞がるが、三木は命がけで自分を庇った千鶴の姿を見て、このまま自分の復讐や羅刹との対決へ連れて行けば今度こそ死なせてしまうのではと迷い始める。
 そうこうしている間に新選組や旧幕府軍は甲府、上野、宇都宮と戦場を東へ、北へと移していく。新選組を追い掛け憎しみをぶつけたい怨讐の念と、無理にでも復讐を忘れ千鶴とこのまま穏やかに暮らせば彼女を死なせず済むのではという想いに苦悩する三木へ、千鶴は復讐のためではなく、三木の心のために新選組を追うことを提案する。
 三木を死なせたくない。新選組の皆にも無事でいて欲しい。そう願う千鶴は、三木に悔いが残らないよう、新選組が今どういう道を歩んでいるのか、どんな想いでいるのかを知るべきだと主張する。
 三木はこれに同意し、二人は再び新選組を追い北上する。

 出発してからも本当に同行するのか、危険なのだから綱道や羅刹については自分に任せ江戸で待つ気はないのかと尋ねる三木に、千鶴は綱道や羅刹のことは自分に関わる問題であること、そして何より三木を一人には出来ない、どうしても側にいたいから同行させてほしいと頼み込む。
 自覚のない千鶴に対し、その想いを理解してしまった三木は、千鶴の同行を許しつつも複雑な思いで指摘を避ける。千鶴の(告白に等しい)訴えを喜んでいる自分の想いを自覚することになるが、これまで兄も仲間も守れずにきたことから「大切な人」を守れない自分に不安も感じており、千鶴を「大切だ」と思うことに秘かな苦悩を抱えることになる。

 何とか戦火を避けて進み関東を抜け、仙台を目前にしたところで綱道の暗躍を知り、これを阻止することになる。
 仙台城を支配下に置いている山南と綱道、薫に迫る中、三度不知火が現れ、彼個人の事情によりやむなく共闘する羽目に。大勢の羅刹を前に千鶴を庇いながら戦う三木と不知火だったが、薫が全力で戦いに加わると次第に押され始める。
 撤退も出来ず、いよいよ千鶴が自らの身と引き換えに二人を逃がそうとしたそのとき、山南が綱道を裏切り形勢が逆転。山南と不知火が羅刹と薫を止めている間に千鶴は綱道へ最後の説得を試みるが、彼女の言葉は届かない。(説得内容はAと同様)
 覚悟を決め、小太刀を抜こうとする千鶴に代わり、三木が綱道と対決する。最期の瞬間、綱道は正気を失った羅刹から千鶴を守ろうとし、その隙に三木が綱道を殺害する。
「(最後には対立してしまったが)綱道は自分を家族だと思ってくれていただろうか」と泣き崩れる千鶴に、三木は「死んでも家族の絆は失われない」と答える。
 大切な者を守るために誰かの家族を殺す。それは新選組が三木にしたことと全く同じだった。

 仙台で新選組のため、自らの研究の後始末のため、羅刹の処分を終えた山南は力尽きる。
 三木と共にいる千鶴へ屯所での長い軟禁生活を改めて謝罪するが、千鶴は「新選組の皆さんと一緒に暮らせてよかった」と素直な気持ちを伝え、彼の手を取り最期を看取る。
 鬼としての道を踏み外していた綱道・薫を捉えることが目的だったとここで初めて明かした不知火は、昏倒した薫を連れて姿を消す。

 山南を弔い、不知火と薫を見送った二人は仙台城を脱出し城下で身を休める。
 三木はここまで支え、ついてきてくれた千鶴に礼を言い、今の自分の心境を語った。もうすぐ新選組本体が仙台へ到着すること、そこで決着を付けること。そう話す三木の表情に悔恨の激情はなく、寂しさや哀しみと穏やかさが入り混じった複雑なものだった。
 最後まで見届けると言う千鶴に、三木は土方らの元へ戻るかと尋ねるが、千鶴は首を振る。三木が許してくれるのなら、せめてどこかへ落ち着くまでの間だけでもいいから共に行きたいと言う千鶴を三木は受け入れ、求め、最期までそばにいて欲しいと願い、二人は結ばれる。

 そうして静かになった仙台に、土方ら新選組が到着した。
 三木と千鶴の姿に驚く土方の前で、三木は千鶴へこの旅の終わりを告げる。
 新選組のしたことは決して許すことは出来ないが、何故、どんな想いで手に掛けたのかは綱道との戦いで理解した。憎しみが消えることはないが、今ここで復讐を果たしたと、憑き物が落ちたように穏やかな顔で言う。
 「お前たちなりに千鶴へ目をかけて可愛がってはいたんだろう」と認めた上で、「こいつは俺が貰っていく。お前らは死ぬまで戦え」と土方へ告げる。
 土方らの戦況は芳しくなく、羅刹隊も既にない。旧幕府軍が追い込まれていることは明らかだった。このまま戦えば、名が知れている土方は戦場で生き残ったところで間違いなく死罪は免れない。三木はこの先の死を求めること、彼らが大切にしていた千鶴を「奪う」ことで手打ちとしたのだ。
 千鶴は新選組の皆の無事を祈りながらも、三木と共に生きる道を選び、彼らにこれまでの感謝と別れを告げるのだった。

 江戸へ引き返し雪村診療所で暮らす二人の元に、旧幕府軍が蝦夷地で敗れたという報が届く。
 伊東や御陵衛士、綱道の菩提を弔いながら、二人で前を向いて生きていく。それが自分なりの復讐であり、新選組への弔いだと言う三木。
 自分は新選組の菩提も弔うと言う千鶴を「好きにしろ」と笑って許す三木には、もう怨讐に囚われた哀しみの影は見えなかった。



◆Bルート屯所時代〜鳥羽伏見 仔細・補足
・1865年5月の二条城警備辺りではまだぎこちない関係。
・1865年11月の近藤さん・伊東さんたちの広島出張時期に三木さんと距離が近づく出来事がある。
・1866年の1年をかけて少しずつ距離が近づいていく。12月頃には「伊東派」の存在あり。
・三木さんは「父親探しという目的のために動く」「そのためなら軟禁も受け入れる」という千鶴ちゃんの覚悟を評価して認めてくれる流れ。
・平助くんが悩んでる時期と被る。平助くんは三木さんが(千鶴ちゃんの現状、軟禁、綱道さん探しせず)怒るのも分かるなと思っている。
・三木さんと関わることで良い顔はされないが、千鶴ちゃんが近藤派の隊士に冷たくされるということはない。三木さんも千鶴ちゃんの立場を考えてこっそり短時間で会って話す感じ。バレてるけど控えめに。

・1867年3月、原作通り千鶴ちゃんが羅刹に斬られる。
 既に話題には出ていたが千鶴ちゃんが及び腰で保留していた新選組脱退について三木さんが話を進める。
 離隊決定後に伊東さんを立会人として近藤さん・土方さんへ交渉し、御陵衛士には加入させない、千鶴ちゃんも新選組で見聞きしたことを口外しない、など約定を定めた上で、「どうするかは千鶴に選ばせ、双方圧力をかけない」ことを約束させる。
(羅刹の件もあり土方らは苦渋の決断。実際には隙を見て連れ戻すことも考えていた)

・御陵衛士に加担する訳ではなく、あくまで三木さんが(友人として)個人的に面倒を見ている。
 衣食住を共にし、支えてもらう例として屯所にいたときのように衛士の世話を焼くが、三木さんは「必要ない」と言っている。
・三木さんと千鶴ちゃんは友人だと言っているが、伊東さん始め御陵衛士の仲間たちは「お察し」状態。
・3月離隊〜11月油小路までの間、三木さんは御陵衛士としての活動をしつつ、千鶴ちゃんの綱道さん探しに協力している。これは平助くんも協力している。
・外出は自由だが、一人で出ると新選組の情報が欲しい者や新選組に恨みを持ち千鶴ちゃんの顔を覚えている者がいた場合危険なので、基本的には一人では出掛けないよう言われている。
 三木さんが斎藤さんを信用していなかったため、基本的には三木さんか平助くんが同行。屯所時代のように「出るな」という命令はないので、近所への買い物程度であれば時折一人で出ることも。
・千鶴ちゃんがいるので平助くんのお悩みモヤモヤ度は多少マシなような気がしなくもないが、根本的な解決には至らないのでやはり油小路では新選組へ復帰しようとして負傷→羅刹化。
・斎藤さんは新選組へ平助くんや千鶴ちゃんの様子も報告していたので、近づきすぎないようにしつつも複雑な心境で見守っていた。
 これは様子を見て千鶴ちゃんを連れ戻す(=保護する)つもりだった土方さんの指示によるもの。

・油小路当日は、止めたものの伊東さんは近藤さん土方さんの接待に一人で出掛けてしまう。
 心配しつつも見送ったあとで「待って気を揉むくらいなら気晴らしに外へ食べに行くか」と千鶴ちゃんとご飯デート。事件後何も知らず帰所し、油小路から何とか逃げてきた衛士の仲間から事件を知る。
・その後衛士は史実通り各所の保護や支援を受けるが、その筆頭に立ちつつも、三木さんは鳥羽伏見で単身で伏見奉行所を襲撃、捕縛される。
・三木さん単独で伏見奉行所を襲撃。当然ながら多勢に無勢で負け、殺されそうになるが、三木さんを探して追い掛けてきた千鶴ちゃんが庇い、二人とも捕まる。(千鶴ちゃんは保護)
・相馬くん「三木が新選組に刀を向ける限り、俺は隊士として応戦します」
 「今は新選組を離れたとはいえ、雪村先輩は雪村先輩です。あなたが新選組に尽くした月日はなくなりません」「先輩の頼みでも三木をこのまま無罪放免には出来ませんが、牢で会って話すくらいなら」
 →こっそり三木さんに会わせてくれる
・相馬くん「出来れば新選組も御陵衛士も忘れて一人の女性として平和に暮らして欲しい」
 千鶴ちゃん「三木さんをこのまま一人には出来ない、放っておいたら今度こそ死んでしまう、三木さんは父様を探せるよう私を助けてくれた、だから…」→断る
・最終的に「雪村先輩には敵いませんね」と苦笑い。
 どうにか三木さんが死罪だけは免れるよう考えようとしたところで戦火が激しくなり相馬くんは戦場へ。千鶴ちゃん隊士の手当てなど(原作各ルート同様)雑務にあたる。
 そして伏見奉行所陥落で「捕虜を連れて逃げる余裕はありません」→三木さん(+千鶴ちゃん)釈放。



(16.04.27.)